江戸小話から「小鳥を捕まえる」

むかし、あるところに、小鳥を捕まえる名人がいました。
 この男は小鳥を捕まえるのに、なにひとつ道具を使いません。
 手ぶらで野原へでかけていっては、スズメやコガラやヒヨドリを捕まえてきます。
 ある人が不思議に思って、
「お前さんは、どのようにして小鳥を捕まえるだね?」
と、たずねました。
「なあに、簡単な事だ。山へ行って、日あたりのよいところに仰向けになって、指で鼻のあたまをおしあげて空へ向ける。これを小鳥が空からながめると、ちょうどクルミの実を二つ割りにしたように見える」
「ふんふん、なるほど。それで?」
「小鳥はクルミが好きだから、パタパタと飛んできて顔にとまる。それを片方のあいた手で、かたっぱしから捕まえるのよ。お前さんも、やってみなせえ」